1. 持続的な土地管理法を確立する
80億に迫る世界の人口を支える農業は、その一方で環境に対して大きなインパクトを与えています。農地の開墾は、生物の生息地を乱し生物多様性を減らすとともに、化石燃料の使用よりも多くの二酸化炭素を放出してきました。また、多量に使われる化学肥料は水を汚染するとともに、窒素やリンの生物地球化学的循環を乱しています。食料需要を満たしつつ環境を保全するためには、土壌の研究が不可欠です。アジアやアフリカなど世界中の地域を対象として、温室効果ガスの放出、砂漠化、土壌侵食、水系汚染などの対策に取り組み、持続的な土地管理法の確立に取り組んでいます。
2. 多様な生態系における土壌の特徴と物質動態を明らかにする
土壌は、その場の気候と地形の影響を受け、そこに育つ植物や微生物と相互作用をしながら、気の遠くなるような時間をかけて生成します。そのようにして生成した土壌は、植物生産を支え、そこから流出する水の質や量を制御し、また温室効果ガスである二酸化炭素や亜酸化窒素などを放出しています。熱帯から亜寒帯、湿潤地から乾燥地までの多様な生態系を対象として、各地で生成した土壌の特徴を明らかにし、また炭素や窒素、ミネラルといった物質の動態を理解するための研究を行っています。
3. 人間と土壌・自然・農業の関わりを明らかにする
持続的な土地管理のためには、土壌中の物質動態の理解や農業技術の確立だけではなく、人と土壌・自然・農業の関わりを明らかにする必要があります。各地域の人々がどのように土壌を含む自然資源を認識し利用しているか、新たな農業技術の普及に必要な条件とは何かといった疑問に対し、社会的および経済的な背景も含めて研究を進めています。
キーワード: 環境問題; 炭素動態; 窒素動態; リン動態; 有機物蓄積; 砂漠化; 土壌侵食; 森林生態系; 農地生態系; 土壌生成; 粘土鉱物; 土地利用; 土地管理; 食料生産; 収穫量; 生物地球化学; 安定同位体トレーサー; 13C; 15N; インドネシア、ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー、カザフスタン、インド、ネパール、タンザニア、カメルーン、マラウイ
具体的な研究テーマについては、各教員のウェブ・ページ、博士・修士・学士論文等の業績を参照してください。